桜一射会マニュアル

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桜一射会
第4版 2024年12月

目次

1. 桜一射会の沿革

2. 基本事項

2.1 入会と退会
2.2 練習時間・練習場所
2.3 道場使用可能日・時間
2.4 筑波大学弓道場使用規定
2.5 会費納入
2.6 入会希望者・見学者への対応
2.7 役員
3. 道場でのマナーときまり
3.1 あいさつ
3.2 道場内で
3.3 行射にあたって
3.4 矢取り
3.5 あずちに横たわった矢の処理
3.6 巻藁練習
3.7 私物管理
4. 危険防止

5. 道場の準備・後始末

5.1 道場の準備の仕方
5.2 後始末の仕方
5.3 的貼りの仕方
6. 弓射の基本技術(日置流印西派)
6.1 射法とチェックポイント
6.2 手の内を調える重要ポイント
6.3 上手になるための秘訣
7. 弓道具の基礎知識
7.1 弓
7.2 矢
7.3 ゆがけ
7.4 弦
7.5 胸当て
7.6 ぎり粉と筆粉
7.7 その他の弓具と諸道具
7.8 道具の出し入れ
7.9 購入時の全般的な注意
8. 弓道流派の基礎知識

9. 審査・試合

9.1 審査
9.2 試合
9.3 弓道連盟への加入
10. 会則等
10.1 桜一射会会則
10.2 入会手続き
10.3 会費の支払い方
10.4 自動退会
10.5 年間行事
11. 参考図書

12. 筑波大学弓道場見取り図


1. 桜一射会の沿革

桜一射会は、かつて春と秋に開かれていた筑波大学公開講座スポーツ教室「弓道」 で学んだ弓道同好者が、何とか引き続き弓を引ける機会がほしいと入江、森両先生に相談し、 ご快諾をいただいたことからグループが発足した。 名前をどうするか色々案が出た結果、 筑波大学の当時の所在地であった桜村(現つくば市東部)の '桜' と '一射一射を大切にする' という意味を込めて '桜一射会' と決定された。
第一回の桜一射会の例会は、昭和56年11月14日に 入江、森両先生を含め9名が参加し開催された。 その時会則・役員などが承認された。 昭和56年6月28日の稲垣先生主幹の第一回歩射研究会には、 すでに桜一射会の名前がみえるので、桜一射会の成立は、 正確な日付の記録は手元にはないが、昭和56年春頃と考えられる。 (後述の つくば市支部「旧:桜村支部」の設立は昭和50年4月)
月に一度の弓道例会、夏冬の定例射会、春の一水会(東京)との交流射会、 各種大会への参加などを行い、会員の射技向上に努めてきた。 令和2年からのコロナ禍において、筑波大学に立ち入りが制限された時期を経たが、 現在でも活動が続いている。 会員が自発的にやりたいことを主張すると実現するという 自由な雰囲気が特徴である。
毎年公開講座のあと、 引き続き必ず何人かは入会して年々会員数は増大し、その数は数十名となっている。 会員の自主性と、 筑波大弓道関係者の包容力によって 支えられている会といえるであろう。

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2. 基本事項

2.1 入会と退会

桜一射会には、「弓道を通じて会員相互の親睦をはかり、弓道の発展をはかる」 という本会の主旨に賛同する人は、原則として誰でも入会できます。ただし、 次の制約があります。
  1. 筑波大学の学部学生は入会できません。
  2. 中学生、小学生、乳幼児は入会できません。
  3. 未成年は、保護者の同意が必要です。 また、学校の弓道部に所属する者は、顧問の許可も必要です。
  4. 弓道未経験者は、筑波大学公開講座スポーツ教室「弓道」(2024年現在休止中) を受講、修了したあとで、入会してください。
  5. 1-4により入会資格なしと判断される場合でも、 代表が認めれば入会できます。
休会・退会するときは、会計担当者に連絡してください。

2.2 練習時間・練習場所

筑波大学の蓬矢館弓道場にて、休日の使用許可を得た時間帯に練習できます。 弓道部員に後ろの的を譲ること。

2.3 道場使用可能日・時間

学内行事、授業、弓道部の練習が優先されます。 それらのない土日を中心に、大学に許可を得た時間帯は使用可能です。 インターネット上では、 桜一射会のページ

http://sakuraissha.starfree.jp/

で月ごとの道場の情報を見ることが出来ます。

2.4 桜一射会 筑波大学弓道場使用規定

桜一射会会員は、道場責任者及び筑波大学体育センターの許可を得て筑波大学弓道場を使用できる。

2.5 会費納入

桜一射会の会費は、半期ずつ(1-6月と7-12月)の前払いが原則です。 練習しない月があっても、また途中で休会・退会しても、返金されません。 半期の途中で入会した場合は、 入会月以降の会費のみを支払うことになります。例えば、3月に入会した人は、 始めに3-6月の会費を支払っていただきます。

会費は、会計担当の指定した期間に、 以下の要領で、ゆうちょ銀行の桜一射会の口座に送金すること。 半期ではなく、一年分まとめて支払っても構いません。 ただし、年をまたいでの先払いはできません。 口座番号については入会後に会計担当に確認の上、ご対応ください。

手渡し納入は原則廃止されました。 もし、なんらかの事情で銀行振り込みができない場合は、個別に会計担当に相談してください。

振込と同時に桜一射会の会計 sakuraisshakai.kaikei@gmail.com 宛に、次の内容をメール連絡すること。 会費の支払状況は、総会等の開催時及び必要時に、会計担当者が報告します。

2.6 入会希望者・見学者への対応

桜一射会への入会希望者は、筑波大学公開講座スポーツ教室「弓道」の受講者、 インターネットで会のホームページを見て連絡して来た方、それ以外、の三つに大別されます。 いずれの場合も、桜一射会側の対応者は、 まず入会希望者に入会資格があるかどうかを確認します。 特に、筑波大学の学部学生でないか(大学院生は入会可)、 そうでない方なら弓道経験があるかどうか、の二点が重要です。

入会資格者に該当しない場合は、よく事情を説明し納得いただくようにして下さい。 特に、筑波大学の学部学生の場合には、弓道部への入部を勧めてみましょう。 あるいは、近郊の弓会を紹介するのもよいかもしれません。 大切なことはその人が弓道を始める、または続けるきっかけを、 出来るだけ奪わないようにすることです。

入会資格者には、桜一射会の練習日に道場に見学に来るよう伝えます。 その際、個人の弓具がある方には、持って来てもらいます。見学時の対応は以下の通りです。

公開講座修了者は、入会できます。

なお、受験シーズンになると、休日に受験生が道場を見学にくることがあります。 その場合はすぐに弓道部関係者に取り次ぎます。 万一道場に弓道部関係者がいない時は、その旨を伝えて氏名と高校名を聞き、 道場内を(教官室を除く)見学してもらいます。

2.7 役員

桜一射会には、代表、例会担当、会計、県連担当、ホームページ担当の役員があります。 代表以外は、1年任期で、総会の際に会員の互選で選ばれます。立候補を原則としますが、 立候補者がいない場合は、名簿で入会年の古い順に役員を担当することになっています。

各役員は定められた役割に従って業務を遂行しますが、臨時の支出や急を要する案件など、それ以外の検討事項が発生した場合は役員間で審議の上、異議の無いことを条件として対応を定めて実施します。異議が唱えられた場合は総会にて審議します。実施の場合も次回総会にて報告し意見を求め、反対多数の場合には改めて審議します。

以下、例会担当、会計、県連担当、ホームページ担当の役割をまとめておきます。

2.7.1 例会担当

例会担当は、桜一射会の「例会、射会、総会」 を企画運営するのが主な仕事です。 例会と射会は以下の手順で開催します。
(1) 開催日決定 
桜一射会の練習可能日の中から(土日、祝日の午後)、 以下を考慮して決める。
・代表(先生)のご都合(射術指導を依頼する場合)。
・県内の大きな試合や審査と重ならないこと(優先順位は低い)。
(2) 内容決定
例会は、代表による射術指導を核に、もう一つ。 例えば、体配(日置流、日弓連)、ミニ射会、など。
射会は、「替わり的」「近的二十(八、十二)射」 「十(五、七)段的」など。加えて、金的や扇的。 初心者が混じっている場合は、中間的を近距離に立てるなどする。
(3) 懇親会の設定 
射会や例会のあと、懇親会を行う場合は、その段取りをつける。
(4) 会員への周知
インターネットの桜一射会の掲示板に書き込む。
以上が例会担当の主な仕事ですが、以下も、原則、例会担当が行うことになっています。    
(5) 道場使用日の手続きと周知
道場を使用する際は、事前に弓道部と日程を調整した上で、 体育センターに施設使用許可申請の手続きをする(代理者対応可)。 手続き完了後には、インターネットの桜一射会の掲示板で周知する。
(6) 事務責任者的な役割
必要な場合は、桜一射会の事務責任者としての役割を果たす(*)。
(7) そのほか
日置大会のチーム編成、活動に必要な雑務など。
(*) 例会担当はもともと、「幹事」という名称で、桜一射会の事務と運営全般を行っていました。 しかし、「幹事」は責任が重そうに響くため、なり手がなくなってしまったので、 名称を「例会担当」に変え、仕事も、例会・射会・総会の運営に限定することにしました。 通常はそれで問題ありませんが、どうしても必要な場合には、例会担当の役割を越えて、 会運営事務の責任者的な役割を果たしてもらうことがあります。たとえば、最近の例では、 ゆうちょ銀行の口座開設の際に、会の規約への署名捺印は例会担当が行いました。

2.7.2 会計

会計は、桜一射会の会計事務と名簿管理を担当します。複数名いる場合は、責任者を一名決めます。 桜一射会の事務局は、その会計責任者の住所におきます(*)。 なお、個人情報保護のため、名簿は会員には配布しません。
  1. 桜一射会のゆうちょ口座を管理する(*)。
  2. ゆうちょへの振込の形で、会費を集金する。
  3. 会員が、会の運営に必要な支出を行ったときは、領収書と引き換えに支払う。
  4. 入会者の入会申込書を集め、電子名簿に記入する。
  5. 年一回、名簿(名前、電話番号、メールアドレス)を整理印刷して、代表に渡す。
  6. 2年間会費納入のない会員を退会扱いとする。
(*) ゆうちょ銀行からのお知らせは、会計責任者あてに郵送されます。

2.7.3 県連担当

県連担当は、茨城県弓道連盟つくば市支部と桜一射会 との連絡を担当します。 つくば市支部の通信料や払い込み手数料等は、桜一射会の会計から支出すること。
  1. 試合や審査の会員への周知と、参加者の県連への報告、参加費の送金。
  2. その他、県連からの依頼に応じた業務一般(県連名簿や機関誌の配布、など)。

2.7.4 ホームページ担当

桜一射会のホームページの管理および、メールによる入会希望者の受付を担当します。
  1. 全体のメンテナンス。
  2. 「射会・研修会」「試合結果」などは、関係者からの連絡を元に随時更新する。
  3. 掲示板のパスワードを管理し、会員に周知する。
  4. メールによる入会希望に対しては、希望者が入会資格を有しているかを確認の上、直近の練習予定日および見学に際しての詳細情報を希望者に連絡し、掲示板にて会員に見学・入会手続きの対応を依頼する。

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3. 道場でのマナーときまり

弓道の練習を行う上で、安全のため、 あるいは昔からの習慣として、守らなければいけない ルールやマナーがあります。 弓道を始めて間もない方達はぜひ知っておく必要があるでしょう。 長く弓を引いている人も、再確認して下さい。 安全に気持良く弓道の練習を行うのには必要な事柄ばかりです。

なお、弓道では、道場からあずちに向かって、的の右側を「前」、 左側を「後」と呼びます。
また、行射することは、「弓を引く」または「弓を射る」と表現します。 「弓をうつ」と言う人が多いようですが、間違いですので、 気を付けましょう。

3.1 あいさつ

道場の玄関口で手袋、コート、襟巻などは脱ぎ、 履物はきちんと整理しましょう。 ポケットなどに手を入れたりせずに射場に入り、 しっかりした声で挨拶を行います。 挨拶の仕方は各道場によって違いがありますので、 その道場のやり方を前もって先輩に聞いておき、 しっかり覚えましょう。 ちなみに筑波大学での方法は次の通りです
  1. 道場に来たときは本道場の入口で上座に一礼し、 道場内に誰かいれば「こんにちは」とおじぎをする。
  2. 帰るときは、本道場の出口で上座に一礼し、道場内の人たちに 「お先に失礼します」とおじぎをしてから、道場を出る。
  3. 道場出入口でのあいさつは、道場内で行射中の人がいれば、 その人が行射を終えるまで差し控える。 また、行射をしている人はあいさつのタイミング を待っている人がいれば、胴造りのままで待つようにする。

3.2 道場内で

控えでは立膝はしない。また壁に背をもたれかけない。 足を投げ出さない。 控えと射場の間の段の所に腰掛けるのもいけません。また、中仕掛を作るなどの作業を別として、射場に対して背中を向けて座るのもよくありません。
控えでのあぐらは、差し支えありません。ただし、 礼射中は、正座が原則です。

他の人の行射中は、 大声で話したり笑ったりすると行射のさまたげとなります。 また指導する場合を除いて、 足踏みを終えた人に話しかけるのは厳禁です。 足踏みの終了時には「一間中墨」という精神状態に入ることが必要で、 上記のことはそれを妨害する行為になります。

原則として、道場(射場および控え)での飲食はしない。特に、飲み物は持ち込まない (こぼして、ゆがけや弓を濡らしたりしないため)。

人の道具に触らない。あまりじろじろと見ない。また、 無断で使用したりしないこと。 道具にはその射手の欠点も如実に現れるので、 それをじろじろと見ることは失礼なことになります。 弓の場合では破損することもあり、 そうなっては取り返しがききません。 初心者の間は道場の共用の道具を使いますが、 その際あやまって 他の人の私物の道具を使わないようにしましょう。

特に、他人のゆがけの弦枕は見ないように心がけて下さい。 「ゆがけを見せてください」と、 お願いすることも好ましいことではありません。 又置くときもゆがけの内側を下向きにします。 弦枕は射手の技術の良否がそのまま痕となって残っているもので、 みだりに覗くことは大変失礼なこととされています。

人の引いている最中に、「狙い」を覗くことも礼を失したことです。 試合などで他人の狙いを見ている人を見かけますが、 気を付けたいことの一つです。もちろん指導者が、 指導の時に見ることは別問題です。

ごく初心の人に対しては別として、 自分が指導する立場にない人を頼まれもしないのに 指導しようとしたり、人の射術を云々したりすることは厳に 慎みたいものです。当然のことですが、 自分よりも経験の長い先輩の射術に口を出すことは大変失礼なことです。 弓の技術は古来、 先生から弟子へと一対一の関係で伝えられてきたもので、 誰に教える・誰から教わるという関係は非常にはっきりとしたものです。

人の弟子構えて弓をそしるなよ
その人毎に心あるべし (日置流印西派無言歌)
筑波大学弓道場では服装も自由で、足袋をはく義務もありませんが、 他の道場では足袋か靴下の着用を義務づけている所がほとんどです。 試合などで、 他の道場を訪問する際には気をつけましょう。

3.3 行射にあたって

本道場を使用するときは、弓道部員の邪魔とならないよう、 後ろの三、四的はいつでも空けておきましょう。 また道場に弓道部員が来た時は、的を譲るようにしてください。

的は通常は先輩ほど後の的を使用します。 特に大後(左の端の的)は道場の最高位の指導者が、 大後前(大後の一つ右の的)は指導者クラスの先輩が使用することが 不文律として決められています。 後ろに居る方が後輩の射がよく見え、指導しやすいという理由もあります。 サブ道場では射場が狭いため、 このことはあまり気にする必要はありませんが、 危険防止のため、初心の方は中央の的を使用してください。

混雑している時を除いて、終始同じ的を使用するようにしましょう。 初めて的を引くときは、その的を使用中の人がいないかどうか確かめて、 使用中の人がいるときは空いている的を使用するか、 一声かけて一緒に使用させてもらうようにしましょう。

矢は自分の矢を使うようにして下さい。特に初心時代、 矢を道場で借りている間は、 他の人の矢を間違って使用しないように気を付けましょう。 持ち主に失礼なだけでなく、 短い矢を間違って引いた場合には引き込む恐れがあり、 非常に危険です。

弓を引くときは時計・指輪・ブレスレット等、腕を重くするものは、 はずすのが心得です。 ブローチやペンダントも発射のときに弦ではらう恐れがあるので 必ずはずしましょう。 また同様の理由で長い髪も後ろにまとめるようにしましょう。

ゆがけは必ず座って付けるようにします。 矢取りの時は、ゆがけや胸当てを外して矢を取るようにします。

替え弦はいつも用意しておくことが射手としての心得です。 そして、弦の中仕掛や弦と弓が当たる相打の所などはけばだったり、 ほぐれたりしないようにこまめに手入れをするようにします。

矢を射終った後に、ゆがけの弦枕を見ることは控えましょう。 少し中りの出てきた人で、矢が外れた時によく見受けられますが、 矢が外れたのはゆがけのせいではなく、 それを使っている本人のせいです。もし、 ゆがけの具合が悪いようでしたら予め修理して使うものであり、 ゆがけのせいにしたりするようなポーズはやめましょう。

空穂なる矢の根は錆びて弦ほぼけ
弓射るばかり射るが射るかは (日置流印西派無言歌)
稽古の最中、他の射手に弓が触ったりしたときは、 必ず「失礼しました」と声を掛けるようにしましょう。 弓は昔、鉾といって鑓の代わりにもされた武器です。 それが触れたのですから、声を出して詫びるようにしましょう。

3.4 矢取り

矢取りとは、あずちに刺さった矢を抜き取り、綺麗に拭いて、射場まで返すことを言います。 矢取りのタイミングや作法は、道場により異なります。筑波大学では、以下の原則で行っています。 この原則に従って、以下の要領で、矢取りをして下さい。
  1. 矢取りを行う人は、自分の矢を引き終えた順に、適宜、看的に移動し、矢拭き布を持って、 道場からの合図を待ちます。待機場所は控えではないので注意(*)。
  2. 道場の射位に立っている全員が引き終わったら、最後に引き終えた人が
    「お願いします」
    と声を掛けます(*)。
  3. その声を確認した後で、矢取りの人は手を二回たたき的場に入ります。
  4. だいたい自分が引いた的近辺の矢を取りますが、それほど拘る必要はありません。 一人で複数の的の矢を取る場合は、 矢を踏まないよう必ず後ろの的から前の的に向かって矢を取ってゆきます。
  5. 右手に矢拭き布を持ち、的の後ろに立ちます。 的中した矢を取る場合は、左手で的を支えます。 そして篦(シャフト)の鏃に近い方を右手で上から包み込むように持ち、 矢を曲げないようにあずちから抜き取ります。
    抜いた直後に矢を左手に持ち替えますが、その際に、 矢拭布を持った右手をゆるめず、左手で篦の羽に近い方を持って抜き取れば、 矢の篦を拭くことができます。
  6. 矢は一本ずつ取るようにします。 二本以上の矢が近くに刺さっているからといって 一遍に取っては失礼ですし、矢を痛めることにもなりかねません。 もちろん、羽根を持って抜くのは厳禁です。
  7. 的の合わせ目に矢が入った場合は、無理に抜かず的ごと看的に持込み、 代わりの的をたてます。そして侯串などを使って合わせ目を広げながら 矢を抜き取ります。
  8. 最後に矢を束ねて鏃についた泥、砂を拭き取り、 道場の矢立に矢を入れます。この時、誤って筈を地面につけたりしないよう注意してください。溝に砂が入ってしまいます。
  9. 矢を持ち帰り、大後的の矢は専用の矢立に、 他の矢は立の近辺の矢立に入れます。
  10. 矢取りをしてもらった人は、
    「ありがとうございました」
    と礼をいいましょう。

    (*)最近、自分の矢を自分で取る人が多いようですが、少なくとも筑波大学では義務ではありません。 自分の矢を自分で取りたい場合は、早目に看的に移動してください。 道場をばたばた走って看的へ移動することはやめましょう。矢取りに遅れた場合は、 その立の自分の矢は人に取ってもらい、 次の立の矢取りをすればよいのです。
    特に、立の最後の人は、矢取りに行く必要は全くありません。むしろ、 「お願いします」の合図を掛けるのが義務です。これは、危険防止のために重要です。特に、 冬季は射場にビニールカーテンが掛かって、看的から見えにくくなりますので、 合図なしで矢取りに入るのは危険です。
    また、矢取りをする人が、控えで待っていると、「お願いします」の合図を掛けることができませんので、 必ず、看的で待つようにしましょう。

3.5 あずちに横たわった矢の処理について

発射した矢があずちに横たわったり、矢道に横たわったり、 的面に斜めになったりした場合、ただちに矢を取りに行く必要があります。 そのまま次の矢を発射すると、 矢を破損する確率が非常に高いからです。
  1. 看的に行き、二回手をたたき、射場からの合図を待つ。
  2. 射場では打起しをひかえる。
  3. すでに打起しに入っている人はそのまま行射する。
  4. 他の人は看的に「あと何本」と打ち起こしに入っている人の人数を伝える。
  5. 射場内の人は、打起している人がなく、みんなが待機状態で、 安全が確かめられたら、「どうぞ」あるいは「お願いします」 と合図をする。
  6. 矢取りの人は再度手をたたき、的場に入って該当の矢を処理する。
  7. 的場から退出したら、射場に向かって「どうぞ」と合図する。

3.6 巻藁練習

巻藁を引くときは、以下の点に注意しましょう。
  1. 人が通らない場所に巻藁があることを確認する(*)。
  2. 左手に弓の握を持って巻藁に向かって延ばし、 弓の先と巻藁の間にこぶし一つ分の隙間ができる位置に立って、 そこを足踏みの中心にする。
  3. 巻藁矢を使う。的矢を使うと、巻藁と矢の両方を痛めてしまう。
  4. 矢が突き抜けるぐらい柔らかくなってしまった巻藁は使わない。 壁に矢が中たって跳ね返り、怪我をする恐れがある。
  5. 刺さった矢は、自分の前後の人が引き終わってから抜くこと。
  6. 矢を抜くときは、左手で巻藁を押さえながら、右手で矢の根を持って抜く。 片手で抜くと、巻藁が倒れてしまう。 なお、弓を置いてから矢を抜くのが正式な方法だが、 略式には左手に弓を持ったままでも構わない。
  7. 巻藁に矢が刺さったままにしないこと。眼の高さに刺さっているため、 知らずに入ってきた人の眼を刺してしまう恐れがある。

    (*) 筑波大学の本道場で巻藁を引く場合は、人が入って来ないように、 下手の扉を閉めること。逆に下手の扉が閉まっているときは、 そこを開けて入らない。

3.7 私物管理

私物は、自己責任で管理してください。貴重品はできるだけ持ち込まないように、 やむを得ず持ち込んだときは、自分の目が届くところに置いてください。

私物の弓具は、持ち帰りが原則ですが、頻繁に練習する人は、 弓と矢筒を道場に置いて帰ることもできます。その場合は、必要最小限の弓具だけにしてください。 使っていない弓具を長期間放置している人がいますが、道場を倉庫代わりに使わないこと。

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4. 危険防止

弓道で使用する道具は昔、 戦争や狩に使っていたものとほとんど同じもので、 28 mの距離でも畳を射抜くほどの威力があります。 危険防止のための注意を少しでも怠ると、 人に大怪我を負わせたり自分が怪我をしたりすることにもなりかねません。 すでに述べたこともありますが、 以下に、安全のための基本事項をまとめておきます。
  1. 人に向かって弓を引かない。 たとえ矢を番えず、発射するつもりはなくても絶対にしない。
  2. 弓を引いている人の体の中央の線より前に出ない。 また引いている時に誰かが自分の前に出た時は、 すぐに弓をもどす。
  3. 自分の矢束よりも短い矢は絶対に使用しない。
    矢が短いために矢先が左手親指の左側に外れた状態で発射し、 矢が弓に当たって射手の方にはねかえることを 「引き込む」といい、大怪我を負うことがある。 人が矢束に比べてかなり短い矢を使っているのを見かけたら、 お互いに注意しあうこと。 引き込み防止は射手だけの責任ではなく、 いっしょに稽古している人全員の責任でもある。
  4. 素引きの際は弦をしっかり握ること。 弦を放すと、弦が切れたり、自分も腕を打ったりして怪我をする恐れがある。
  5. 矢取りの際は決められた方法にしたがって、 安全を確認してから行う。
  6. 初心で矢所の安定しない間は、 道場の中央付近の的を使用すること。
  7. 強制ではありませんが、万が一のことを考えてスポーツの賠償責任保険に加入することもお勧めします。

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5. 道場の準備・後始末

5.1 道場の準備の仕方

道場が閉まっているときは、最初にきた人が道場を開けましょう。 道場を開けた時は、すぐに的を立てるのが心得です。

あずちの整備

  1. あずちに水をかける。 但し厳寒期は、凍結防止のため水をかけない場合があります。
  2. 看的より竹ぼうきを出し、
  3. あずちを下から上へむかって掃き上げる。
  4. あずちが崩れてしまった場合にはスコップで砂を上げる。
的の立て方
  1. 正式には的の間隔を示した紐を張り、 印の所に的の中心が来るようにして的を立てる。
  2. 略式には、尺二的の場合は枠の下縁が地面から 9 cm(握り拳一つ)となるように立てる。
  3. 的枠の合わせ目が下になるように立てる(*)。
  4. 立て終わったら、二回手をたたき、 射場に向かって大きな声で「お願いします」と合図する。
  5. 射場内の人に見てもらい、指示にしたがって速やかに修正する。 射場から「結構です」と合図されたら、侯串で的を支える。 的は、地面に対して、垂直から5度だけ傾けること。

    (*) 的の合わせ目に矢が中たると的枠が破損しやすい。 そこで、普通の道場では、 的枠の合わせ目を上にして侯串で挟むことが多い。 だが、経験的には、 合わせ目を上にして侯串で守るよりも、 下にして土で守るほうが破損が少ないため、筑波大学弓道場では "合わせ目は下"に統一している。

的の呼称
六的の場合、向かって右より、大前(おおまえ)、 弐的(にてき)、参的(さんてき)、四的(よんてき)、 大後前(おちまえ)、大後(おち)と称する。 三的の場合、向かって右より、大前(おおまえ)、 中(なか)、大後(おち)と称する。

5.2 後始末の仕方

的と侯串は、ついた砂をよく落として看的場に返します。 そしてあずちを箒で穴を隠すように丁寧に掃き上げます。 厳寒期にはあずちをむしろで覆い、凍結を防ぐ場合があります。     そして射場のシャッターを閉め、筆粉・ギリ粉を整理し、 電気を消して扉を閉めて終わりです。

5.3 的貼りの仕方

的は、本来使った人が新しく貼り直すのがルールです。 的中が多い人は、責任持って的貼りをしてください。

小麦粉をつかっての糊の作り方
     (最近は小麦粉糊ではなく、的貼り専用糊を使うことが多い)

  1. 鍋に小麦粉を入れ、水で溶かす。
  2. 電熱器、またはガスコンロにかけてトロミをつける。 ダマにならないよう、焦げつかないようによく混ぜながら、 薄すぎず、濃すぎず。
的貼りの準備
  1. 的枠から、ぼろぼろになった紙をはがす。 ガムテープは、的紙を取り除き易くするために貼ってあるので、 はがさない。
  2. 的枠の砂をしっかり落とす。
  3. 他の人は、下紙用の新聞紙を4分の1に切ったり、 貼る場所のセッティング(机を出し、床が汚れないように新聞紙を敷く) をしたりする。
的の貼り方
  1. 的紙の裏面全体にむらなく、刷毛で糊をぬる。
  2. 下紙の4分の1の新聞紙を、的紙の左半分に貼り付け、

    紙の中心から外へ空気を追い出すように

    刷毛で糊を塗ってしわをのばす。

  3. 以下同様に、的紙の右半分、上半分、下半分、中央斜めに、 順番に新聞紙を貼り、糊を塗ってしわをのばす。
    以上で、的紙の上に、5枚の新聞紙が貼られた。
  4. 出来上がったものを取り上げ、的枠の上にのせる。
  5. 左右上下片寄りのないように位置させ、的枠に貼りつける。
  6. 出来上がった的を所定の場所に立てかけ、乾かす。
  7. 紙くずを処分し、鍋、刷毛などを洗って乾かす。
ここで説明したのは、筑波大学での的貼りの方法です。 別の道場に行った場合は、 その道場の貼り方に従って下さい。ただし、どんな方法でも、 基本は、 の四点です。

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6. 弓射の基本技術(日置流印西派)

6.1 射法とチェックポイント

(1) 足踏
まず的を見て、的から足下まで視線を移しながら、想像上の線を描く。
その線上に左足を半歩踏み、次に右に半歩踏む。
両方の爪先を結んだ線が的の中心に向いているか。
広さは良いか(両爪先の間隔は身長の半分)。
角度は良いか(60-80度くらい)。
(2) 胴造
姿勢を正す。
上半身のくずれはないか(後ろに反る、前に屈する、的の方に突き掛かる、 的と反対に退く、などは修正する) 。
(3) 弓構
紅葉重ねの手の内は正しく調えられているか。
羽引きは 10-15 cm。
肩のラインはくずれていないか。
(4) 打起
肩は上がっていないか。
矢を引き過ぎていないか。縮んでいないか。
矢の向きは良いか (矢先が上がったり、下がり過ぎたりしてはならない)。
(5) 三分の二
手の内を崩さないで引分ける。
左右の遅い,早いがないようにしよう。
三分の二の位置は良いか確認しよう。
(6) 詰合
左右のねらいは正しく的についているか (第三者に確認してもらう)。
矢は頬骨の下についているか。
引くべき矢の長さは基本通りか(矢束、身長の約半分)。
わからなければ矢に印をつけ、人に見てもらう (矢束の印が、詰合時に弓の内竹までくるように)。
胸弦がついているか。
(7) 伸合
矢束は縮まっていないか。
頬着けの位置は変わっていないか。
弓をしっかりねじりながら伸び合っているか。
手の内の形に変化はないか。
妻手のひねり具合は良いか。
矢口が空いていないか (絶対に空かないように、妻手で加減して矢を内側に押さえる)。
(8) やごろ
時間的に,内容的に早くないか(早気は禁物)。
(9) 離
弱くないか。強く鋭く離さなければならない。
ゆるんではいないか。
角見の働きは良いか(出だしは遅れていないか、ねじりきれたか)。
妻手のひねりは良いか。
体の割り込みはできたか。
(10) 残心(身)
下がり過ぎていないか。
上がっていないか。
両腕が前に出ていないか。
左右のアンバランスはないか(肩の線上が理想的)。
角見を働かせた結果が弓手に現れているか(手首が利いているか)。
妻手のひねりの結果が現れているか(手の甲が上になっているか)。
力が抜けていないか(気合いのこもった離れ、残心が必要)。

6.2 手の内を調える重要ポイント

  1. 前竹、左3:右7の所と虎口の中心を一致させる。
  2. 虎口の皮を巻き込む。
  3. 外竹の左角に天文筋(感情線)を当てる。 その時、 手のひらの部分を内側にすぼめるようにする。 親指と小指を近づけて握る。
  4. 小指は末節関節が外竹の右角に当たるように。
  5. 薬指,中指の爪先は小指の爪先にそろうように(爪揃え)。
  6. 親指と中指の間にすきまができないように注意。
  7. 上押し,下押しにならないように(中押しが良い)。
  8. 弓の握りは自分の手の大きさに合っているか (合わない場合は握りの太さや形を調節しなければならない)。

6.3 上手になるための秘訣

  1. 人の射をよく見ること
  2. 上手な人の技を学ぶ(イメージをつくる、まねる)
  3. 良い射のイメージを浮かべて練習
  4. 指導者のアドバイスに対して素直になること
  5. 不安、疑問は納得するまで指導者に尋ねる
  6. 向上心を持ち、達成意欲を高める
  7. 常に自己反省をする
  8. 目標をもって練習をする
  9. 妥協するな

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7. 弓道具の基礎知識

弓道に限らず、各種スポーツ、 運動においてその使用する用具の性能や取り扱い方をよく知ることは、 運動技術向上のためには大変重要なことです。トッププレーヤーほど 使用する用具に気を使い、大切にしています。 アーチェリーの元オリンピック代表であった有名選手は、 600本のジュラルミンシャフトの矢の中から そのシーズン使用する矢10本を選び出して試合に出場していました。 さすがに世界のトップアーチャーです。

ここでは弓具に関して最低限知っておかなければならないことについて 説明します。

7.1 弓

現在、通常使用される弓には、竹弓、グラスファイバー弓、 カーボン弓があります。 竹弓はたいへん味わいがあってよいものですが、 価格が高く、また取り扱い面で知識と経験が必要です。 現在、 高校生、大学生の間では、ほとんどグラスファイバー弓、 カーボン弓が使用されています。

弓の長さは標準のものが2.21m(七尺三寸)で、 これを並弓といい、他には伸び弓(約 88 cm 以上の矢束の人用)、 寸詰まりの弓(約 83 cm 以下の矢束の人用)があります。

市販の弓の強さは、並弓は85 cmの矢束、 伸び弓は90 cmの矢束での強さをキログラムで表示してありますが、 各自の矢束での強さも知っておいた方がよいでしょう。

弓は'何張'と数えましょう。

弓の張り方

  1. 弓張りに弓の上端を入れ、左手で握下を持ち、 右手は下の関板の部分を持って、 床から20-30cmくらいの所まで下げる。
  2. 弦の下輪を口にくわえ、 右手で関板を持ち上げるようにして弓を彎曲させ、 左腿に下の切詰めのあたりをのせる。
  3. 口にくわえていた弦を右手に持ち替え、弓の下端にかけ、 かけ終わったら右手で関板を持ち、 弓のたわみを静かにもどしていく。
  4. グラスファイバーやカーボンの弓は、張ってすぐ引いても構わない。
  5. 竹弓の場合は、張ってすぐに勢(なり)を直し、その後、 約1時間静置する。 張った直後の竹弓は不安定で壊れやすいので、引かないこと。 肩入れもしない方が無難である(*)。

    (*)「勢を直した後に『上手な人が』肩入れするのは弓に良いことである」
    と書いてある伝書もあります。

7.2 矢 

竹製、ジュラルミン製、カーボン製等がありますが、 上達するまではジュラルミン矢を勧めます。 アメリカのイーストン社製や国産があります。

矢の種類

矢の長さは自分の矢束を目安にします。
矢束(矢尺とも言う*)とは、 矢を引いた長さ、正確には、 「矢を最大に引き絞った時点での両親指の付け根の間の距離」のことを言います。
理想的な射形では、自分の矢束は 首の中心(喉の所)から左手中指の先までの長さです。 これに 5-6 cm(初心者は 10 cm) 加えた長さを、自分の矢の全長とします。

(*) このマニュアルでは、「矢束=矢尺=矢を引いた長さ」、 という定義に統一した。
ただし、「矢束=矢尺=矢の全長」 という意味で使う場合も間々あり、また、 「矢束=矢を引いた長さ、矢尺=矢の全長」と使い分ける人もいる。 人の説明を聞く場合や、教本を読む場合には注意が必要である。

矢は羽の向きによって甲矢(はや)、乙矢(おとや)があり、 この二本を一手(ひとて)といいます。 試合の多くは四本を引きますので、最低四本組の矢が必要ですが、 破損した場合に困りますので、できれば六本組か八本組を用意した方がよいでしょう。 稽古も効果的に行えますし、良い矢を選択して試合に臨めます。
矢筈・矢尻の交換や羽浮きの補修など 簡単な修理の方法は身につけておきましょう。 

矢が真っ直に飛ばない人は次のことをチェックしよう。

まず道具は?

射術は?

7.3 ゆがけ

弓を引くにあたり、右手の親指を痛めないよう保護する 鹿革製の手袋のようなものを、「ゆがけ」といいます。 ゆがけは湿気を嫌いますので、内に下掛け(汚れ防止、汗吸収用) をつけ、夏などは下掛けをこまめに取り替えます。 下掛けは各自用意します。

ゆがけの種類

ゆがけの選び方

購入する際に手形をとって注文すれば、 自分の手にあったものを得られますが、高価となります (時間が掛かることも多い)。 既製品の中から選び購入する時は、 三指ともにぴったりするかどうか調べます。 特に親指の大きさは重要なのでしっかりたしかめます。 外見上は親指の向きに注意し、下を向いたものは避けます。
ゆがけは射術に大いに影響しますので、 予算と相談しながら自分の手に合ったよいものを選びましょう。 自分のゆがけを購入するときは必ず先生に相談してください。 道場のものを使用するにもいつも同じものを使用しましょう。 共用はできるだけ避けてください。

新しいゆがけを使用する時の注意点

新しいゆがけは慣れるまでに時間がかかります。 またよいゆがけを購入したとしても、 使い初めの扱い方を誤るとゆがけの性能を著しく損いますので、 次の点に注意しましょう。

7.4 弦

弦は天然の麻や合成繊維のものがあります。 最初は価格と耐久性から合成繊維製のものがおすすめです。 弦の選択は射手の好みによりますが、普通は強い弓には重い弦、 弱い弓には軽い弦を使用します。 弦の重さが少し変われば弓の調子も変わるものです。 自分の弓に合ったものを使用しましょう。

7.5 胸当て

女性は胸を弦で払わないようにするために、胸当てを使用します。 男性でもボタン付きのシャツや左胸にポケットのあるシャツを 着用している場合などは胸当てを使用します。 普通は自分から見て右上、左下がりに使用します。 体型によっては(引き分け時に弦が胸当てにかかる場合など) 反対に使用する場合もあります。

7.6 ぎり粉と筆粉

ぎり粉

ぎり粉は黄色の粉で、松脂の油分を抜いて作られたものです。 ゆがけに使用し、滑り止めとなるものです。 ゆがけの人差指と中指にぎり粉を取り、親指とこすり合わせる。 あるいは親指の上に取り、人差指と中指でこすり合わせる。 方向は親指の先から根本に向かってこする。新しいゆがけの場合は、 ぎり粉を少し多目に使用します。

筆粉

筆粉は灰色の粉で、もみ殻と藁を焼いてできた灰です。または、 いかの甲羅を粉にしたものを使用することもあります。
左手に取り、握り皮と手の平をこすり合わせます。 手の内が滑ると角見が利かないので、 筆粉使用により滑らないようにするのです。 使用し過ぎてもかえって滑る場合があるので適量を使用すること。

7.7 その他の弓具と諸道具

弦巻‥‥‥予備の弦を巻いて保管するもの。 予備弦には中仕掛も作り、 いつでも使用できるようにしておきます。 各自二本以上用意しておきます。試合には必ず持参します。

筆粉入れ‥‥筆粉は弓手に使用するすべり止めですが、 道場用には共用の大き目なもの、 試合用は小型の容器に入れて持っていきます。

ぎり粉入れ‥‥ぎり粉はゆがけにつけるすべり止めです。 筆粉入れと区別できる容器にしておきます。

矢筒‥‥‥矢を入れる道具で、プラスチック製や籐編、 漆塗りなどがあります。 自分で工夫して作ってみるのも楽しいと思います。

弓巻・弓袋‥‥弓を保護する布製のものです。 道場外へ弓を持って出かける時は必ず使用しましょう。 このほか雨の日にも安心なビニール弓袋やレザー弓袋もあります。 試合にゆくときはビニール弓袋も準備しておきます。

諸道具(道場で借りることができます)

7.8 道具の出し入れ

弓道を始めるのに必要な道具一式は、道場で借りることができます。 控えの後ろの廊下の向かって左側の棚に入っています。 使用したら元の場所に戻してください。

7.9 購入時の全般的な注意

ひととおりの基本が身につき、 正規の距離から行射するようになったら、 少しずつ自分の道具を買いそろえてゆくようにしましょう。
購入の順序は、まず矢、ついでゆがけ、 そしてある程度の強さの弓を引けるようになってから、 弓を購入するのがよいでしょう。

弓具店は土浦に3軒、東京にはたくさんあります。 しかし同じように弓具店の看板で商売をしていても、 例えば「あの店は矢は良いけれども弓はだめだ」といった、 店によっての得手・不得手、専門性がかなりはっきりとあります。 詳しい人によく尋ねて店を選び、効果的な投資をしましょう。

矢はジュラルミン製のものならば比較的品質が揃っており、 安心して買うことができます。

ゆがけは修行している流派によって形が異なります。 購入する時は店の人に「筑波大学で引いている」あるいは 「何流を習っている」とはっきりと告げましょう。 筋の通った弓具店であれば、 流派に合ったゆがけの構造を知っています。 そういってわからない店なら、そこで買うのはやめましょう。

弓は竹製のものとグラスファイバーやカーボン製のものとがあります。 グラスファイバーやカーボン製のものが安価で性能も安定しています。 究極は竹弓なのですが、竹弓の選択はとても難しいものです。 店にいけば竹弓はたくさん並べてありますが、 本当に良い弓はめったにありません。 竹弓の購入はひととおりの弓の見方と調整の知識が身についてから、 自分の責任で選択して購入するようにするべきです。初めて竹弓を購入する時は、 竹弓の調整法の教材にするつもりで購入するのがよいでしょう。

消耗品(弦、下かけ、握り皮など)は、桜一射会に在庫があれば、道場で購入ができます。手続きなどについては会計担当かその他役員など詳しい会員に確認してください。

[目次]


8 弓道流派の基礎知識

日本の弓術は、その射術目的から分類すると大きく三つに分けることができる。 それぞれ、その射術の目的を達成するために名人、達人達が工夫・研究 を尽くして編み出した技術である。また、弓具にも様々な研究が行われ、 射術目的により使用される用具は異なっている。その射術目的に対しては、 それぞれ完璧という域にまで技術の体系が組み立てられていると言っても 過言ではない。その三つの射術とは

1 歩射 2 騎射 3 堂射である。

歩射とは、戦場において矢を確実に命中させ、 同時に貫徹力ある矢を発射させるかというための技術である。 通常「中、貫、久」といわれている。久とは、中と貫が射手である限り、 永続的に実現させることができなければならないという意味である。歩射の射術は、 15世紀後半日置弾正正次によって体系化され、その後日置流弓術として栄え、 九流七派といわれる多くの流派が発生していった。ただし、 多くの流派が発生したとはいえ、歩射としての弓術の根本は皆同じである。 しかし、甲冑を着用した時代から素肌で弓を射るようになったこと、また新しい工夫、 新たな考案など年代が下がるに従い、 弓術も改良されていった結果多くの流派に分派していったといえる。

つぎに、騎射とは馬上にて弓を射る技術のことで、流鏑馬、笠懸、 犬追物などが代表的なものである。騎射に関しては、小笠原流、武田流などの流派が その技術の工夫研究に心血をそそいだ。特に小笠原流は、 鎌倉時代より現在に至るまで代々連綿として親から子へと絶えること無く伝えられ、 その伝統を保っている。また、 礼法故実の研究にも優れていることは当代に並ぶものがない。現在、 騎射として行われているのは流鏑馬だけとなってしまい、 各地の神社などの奉納神事として行われている。流鏑馬は、 人馬一体となって弓矢を射るという技術であり、その習得過程も工夫され、 それぞれ段階がある。また、的が馬を馳せて行く前方にあるために、弓構、 打起を体の前で行う。

堂射とは、京都の三十三間堂の縁の端から端まで一昼夜にわたり矢を射通すという 競技が江戸時代非常に盛んとなり、その目的を達成するために改良工夫された 射術のことである。24時間引き続けるということから、疲労をいかに少なくして、 射続けるかといに射術の特徴がある。堂射は主に、日置流竹林派によってその技術、 弓具が研究された。日置流竹林派は、日置弥左衛門を流祖としているが、 竹林坊如成が日置家の祈願僧として、吉田出雲守重政(日置弾正から三代目) に弓術の教えを受けたという説もあり、 いずれが正しいかは現在のところ研究の余地がある。また、この堂射の記録 達成の為に工夫改良された弓具は、現在の的前の用具にも大きな影響を与えている。

このように、弓術流派には三つの流れがあるが、 現在この三つの射術が弓道家によって誤解されている点が大きな問題点といえる。 歩射としての十五間的前の射術と 堂射の射術や騎射の技術とは異なる点が多くみられる。 場合によっては全く異なる運動を行うということすら幾つか見られる。しかし、 そのことを無視して、または無知により、 十五間の歩射の場で射術の異なる技術で弓を射るということが行われている結果、 現在は様々な射術観が見られるという、混乱した状況といえる。 十五間的前では歩射、馬上では騎射、堂前では堂射と自分の学ぶ射術を考えた上で 弓道を学ばなければならない。

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9 審査・試合

9.1 審査

全日本弓道連盟の審査を受審して合格すると、段位・称号がもらえます。 審査はひとつの練習目標になりますし、 極度の緊張状態で最善の射をしなければならない、最高の修業の場でもあります。 ぜひ積極的に受審しましょう。段位の合格基準は次のように決められています。 審査を受けるには茨城県弓道連盟の会員になることが必要です。 年間登録料は5,000円です。
試験は術科と学科で行なわれます。
術科は一立五人で全日本弓道連盟の体配で一手(二本)引きます。 初段・二段では的中はあまり重要視されませんが、 三段以上になると、最低一本は的中させることが、合格の必要条件になります。 ただし、 的中すれば必ず合格するわけではありません。段位が上がるほど射型・体配・ 動作が審査のポイントになってきます。
学科は五段までは筆記試験のみで行われます。 試験問題は射術に関する問題が一問と、抽象的な問題が一問で、 両方合わせて紙一枚に一時間以内で回答します。 全日本弓道連盟が発行している「弓道教本第一巻」を熟読していれば、 かならず答えられる問題ばかりです。 一般に、 雑誌「弓道」に掲載されている例題から出題されることが多いので、 最近の号をチェックしておくとよいでしょう。
四段までの審査は茨城県弓道連盟所属者は、水戸・ひたちなか・土浦・取手などで受審できます。申込は県連担当の掲示による案内に従い、開催日の40日前までに審査申込書に審査料を添え、県連担当に提出してください。審査申込書は、全日本弓道連盟のホームページからダウンロードできますが、不明な点は県連担当に確認して下さい。また初めて審査を受ける人は、 「無指定」になります。無指定で合格した場合はたいてい初段が授与されます。 審査料と合格時に支払う登録料は表の通りです。

段級 審査料 登録料
無指定 1,030
一級 1,030 1,030
初段  2,050 3,100
弐段  3,100 4,100
参段  4,100 5,100
四段  5,100 6,200
五段  6,200 15,300
六段  7,200 40,900
※令和6(2024)年度時点

(*) 令和2年度以降、学科問題は、審査毎に提示された学科試験問題に基づく 手書きレポート提出となっています。

9.2 試合

試合に出ることは修練に対する大きな刺激になります。 また普段の稽古の時とは全く違った独特の精神状態が体験でき、 次の飛躍への糧を得ることができます。 さらに試合の場で地域の弓友との交流を深めることができます。 ぜひ積極的に参加してください。

試合は大きく分けて、弓道連盟が主催する公式試合と、 各支部が主催する弓道大会があります。 支部(長)宛に案内の届いた試合に関しては、道場やインターネットの掲示板で周知しますので、参加希望者は申し出てください。

案内のない大会は、参加希望者が案内や取り纏めを行ってください。 その際、可能な限りつくば市支部ではなく、個人または桜一射会所属として対応してください。

(1) 公式試合

一般の射手が参加できる公式試合は、全日本弓道連盟が主催する全国大会と、 都道府県の弓道連盟が主催する地方大会、国民体育大会、 全国日置流大会などがあります。

(2) 支部の弓道大会

茨城県内各地の支部で年7-8回以上開催されています。 公式試合のような堅苦しさはなく、気軽に試合を楽しむことができます。 また賞品を狙うのもこの種の大会の楽しみのひとつです。

大会の例
    ・県西弓道大会(筑西市下館武道館、1月)
    ・水戸市観梅弓道大会(水戸市武道館、3月)
    ・土浦桜まつり弓道大会(土浦市武道館、4月)
    ・鹿島神宮弓道大会(鹿島神宮、4月)
    ・香取神宮弓道大会(香取神宮、5月 11月)
    ・あやめ祭弓道大会(潮来高等学校弓道場、6月)
    ・県南弓道大会(取手市グリーンスポーツセンター、10月)

9.3 弓道連盟への加入

審査や講習を受けたり、弓道連盟の公式試合に出場したり、その他弓道連盟の活動に参加 するためには、弓道連盟への加入が必要です。 桜一射会の会員は、茨城県弓道連盟つくば市支部から加入して、 全日本弓道連盟及び茨城県弓道連盟の会員になることができます。 加入希望者は県連担当経由で申し込みます。年間登録料は5千円 (全日本弓道連盟2,000円、茨城県弓道連盟3,000円)です。

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10. 会則等

10.1 桜一射会会則

改定 2003年3月29日・2012年12月24日・2013年1月26日・2013年12月22日

第1条(名称)
本会は、桜一射会と称する。

第2条(目的)
本会は、弓道を通じて会員相互の親睦をはかり、弓道の発展をはかる。

第3条(事務局)
本会の事務局は、第6条に定める会計担当責任者の住所に置く。

第4条(会員)
本会の会員は次の通りとする。
本会の主旨に賛同する者。
筑波大学弓道部関係者を特別会員とすることが出来る。

第5条(行事)
本会は、第2条の目的を達するために次の行事を行う。 会員相互の親睦を図る為の例会を年二回程度開催する。 その他役員会または会員の要望により適宣諸行事を行う。

第6条(役員)
本会は次の役員を置く。
代表 1名
例会担当 3-5名(必要な場合は、本会の事務一般の責任者としての役割も行う)
会計 1-3名(1名を会計責任者とし、その住所を第3条に定める事務局とする)
県連担当 1名
HP担当 1名

第7条(役員選出)
代表は、総会にて選任され、任期は別に定めない。 例会担当、会計、県連担当、HP担当は、総会にて、会員により互選され、任期は一年とする。 留任は妨げない。

付則
1 会費は、月額五百円。 ただし、特別会員は、会費納入義務はないものとする。
2 定期練習日は土曜日・日曜日・祝日午後二時から五時を原則とする。
3 役員は立候補を原則とする。ただし、立候補者がいなかった場合は、 役員未経験の会員の中で入会年が古い者から順番に担当するものとする。

10.2 入会手続き

氏名と連絡先を所定の入会申込書に書いて、提出すること。 会費を支払うこと。

10.3 会費の支払い方

会費は、半期(1−6月、7−12月)毎に前払いする。 ただし、半期の途中に入会した場合は、入会した月以降の会費のみを支払えばよい。 なお、途中休会・退会の場合は返金しない。

10.4 自動退会

2年間に渡り会費の納入がない会員は、自動的に退会扱いとする。

10.5 年間行事

桜一射会として、次の年間行事を行う。

納涼射会 (7月)
納射会・忘年会 (12月)
その他射会 (不定期)
弓道例会(毎月一回)

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11. 参考図書

(1) 初心者向け (2) 中級者向け

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12. 筑波大学弓道場見取り図

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更新履歴

第1版 1992年7月 (山田奨治、梶川武信、松尾牧則、森俊男)

第2版 1999年7月(古明地勇人、渡邉信久、森俊男) 
更訂 2002年1月 2004年11月(入会資格)、2006年1月、 2010年9月(見学者対応、参考書)

第3版 2013年2月(古明地勇人) 
更訂 2013年9月(会費徴収方法)、12月(名簿係廃止) 
更訂 2016年3月(古明地勇人、松尾一郎、小島久)(会費徴収方法、役員と予算、試合参加に関する規定、県連登録)
更訂 2017年12月(松尾一郎、坂井卓行、小島久)(道場利用時間、役員等)
更訂 2020年1月(新井俊也)(入会資格)
更訂 2023年10月(新井俊也)(会費納入、役員、役員選出)

第4版 2024年12月(松尾一郎、新井俊也、吉田麻子、江原拓未、佐藤慎一郎、三上裕之) 

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